弥勒菩薩を宇宙一わかりやすく説明した!
今日のテーマは、弥勒菩薩(みろくぼさつ)。
「ちょっと存じ上げないですね、寝ます」という方。
弥勒、なんと
2代目の釈迦
として
56億7000万年後
に、人間界に降臨する、未来の仏。
その間、
天空で黙々と修行に励む
というすごい存在。
今回もわかりやすさ重視で弥勒菩薩を説明します。
ということで、早速参ります!
1 弥勒菩薩とは?
結論からいうと、弥勒菩薩とは
お釈迦さまの次の仏として、56億7000万年後にこの社会に降臨する存在
です。以下、詳しく説明してゆきます。
2 弥勒菩薩とは何か
2−1 話の前提
別の記事で何度か説明していますが、仏教の世界観に、次のようなものがあります。
①この宇宙には、無数の世界がある。
②それぞれの世界には、最大で1人の仏(悟りを開いた存在)がいて、その世界を運営する。
例えば、極楽浄土という単語を聞いたことはあるでしょうか。極楽浄土も、無数にある世界のうちの一つです。
さて、この無数の世界の一つに、我々が住む「この世界」があります。「この世界」のことを「シャバ」と言います。「シャバの飯」という表現は、これが語源です。
シャバの運営を担当していた仏こそが、あの釈迦さまということになります。
2−2 弥勒菩薩とは?
ここからが本論。
弥勒菩薩というのは、かつてシャバを治めていたお釈迦さまが亡くなったために、その次にこの世界を治めることが約束された存在。いわば「二代目の釈迦」です。
お釈迦さまは、はるか昔にインド地方で生まれた実在の人。80歳の時に亡くなります。
※ 関係ないですが、お釈迦さまの死因は毒キノコによる食中毒です。マジ!?という感じですが、マジです。
お釈迦さまが亡くなったことにより、シャバを担当する仏がいなくなりました。この空いた枠に次に入ることを約束されているのが、弥勒菩薩なのです。
2−3 弥勒菩薩はまだ修行中
上の説明の通り、弥勒菩薩は、次のシャバ担当の仏になることが約束されているだけであり、まだ仏にはなっていません。
弥勒菩薩は「菩薩」つまり修行中の身です。今はシャバの中のはるか天空にいて、時が来るのを待っています。
そして、将来、修行を終えて弥勒「如来」となり、天空から地上に降臨してきて、この世界を治めることとなるのです。天孫降臨みたいな?
2−4 56億7000万年後に降臨
ここまでの話を整理すると、お釈迦さまは亡くなった。弥勒菩薩は修行なう。ですから、いまシャバには誰も仏がいません。無仏の世界です。
ですので我々としては、早く弥勒菩薩に降臨してきてもらいたいものです。
しかし、弥勒菩薩が降臨するのは、なんとお釈迦さまが亡くなった56億7000万年後!
「あの、弥勒さん、お釈迦さんが亡くなったので、次早く来てもらっていいですか。ちょっと世界荒れてきたんで。」
「あ、わかりました。すぐ行きます。」
「あ、どうも。どれくらいかかりそうっすか?」
「そうですね、56億7000万年くらいっすかね。」みたいな感じです。
※ 56億7000万年はどこから出た数字か
この56億7000万年という数字は、次のような計算で出てきます。
まず1年は365日ですが、まあ360日とします(いや、なんで?とは言わないで!)
次に、弥勒菩薩がいる天空の1日は、人間界だと400年に相当するらしいです。
で、弥勒菩薩は4000年の間修行をするそうです。
ということで、これらから弥勒菩薩が仏になるまでにかかる時間は、
400×360×4000=5億7600万年
となります。
あれ、56億7000万年じゃないのでは?と思った方、その通り。
この5億7600万年という数字が、どういうわけか(多分伝達段階の勘違いなどで)、桁が一つ増えるとともに、7と6の数字の順番が逆になってしまったのです。
ということで、弥勒菩薩は、56億7000万年後に降臨してきます。みなさん、しばらく待っていてください。
2−5 弥勒菩薩のモデル
この弥勒菩薩、モデルは実在の人物です。お釈迦さまの弟子である「マイトレーヤ」という人がモデルとなっています。マイトレーヤがかなり優秀で、お釈迦さまから「そなたは将来次の仏になるだろう」と言われたのだとか。このエピソードが一人歩きして、後世に上のような物語が生まれたのです。
3 弥勒菩薩の見分け方
最後に、弥勒菩薩の仏像の見分け方を説明します。
結論からいうと、①手の上や冠の前に宝塔があったら弥勒菩薩です。また、②半跏思惟ならば、弥勒菩薩の可能性が高いです。
①について
手の上や冠の前に宝塔があったら弥勒菩薩です。
宝塔とは、お墓などでたまに見る下の写真のような塔のこと。「宝」という単語に特に意味はなく、要するに塔のことを言います。
この塔を手の上に乗せていたり、頭にかぶる冠の前につけていたりしたら、弥勒菩薩と判断できるのです。
ただ、なぜ弥勒菩薩が塔をもっているのかは、よくわかっていません。
以下独自解釈です。無視してください。
塔は本来、お釈迦様の骨を納めるところ(ここは争いなし)。その塔を弥勒菩薩が持っているのは、弥勒菩薩が釈迦の跡を継いだ存在であることを象徴しているのではないでしょうか。
②について
あ)
半跏思惟ならば、弥勒菩薩の可能性が高いです。
半跏思惟という言葉は馴染みが薄いかもしれませんが、下の写真のようなポーズのこと。皆様も見たことあるのではないでしょうか?
「半跏」とは片方の足のみを膝に乗せること。「思惟」とは物思いにふけること。ということで半跏思惟とは、この写真のようなポーズとなるのです。
半跏思惟をしていたら、弥勒菩薩の可能性が高いです。
このポーズは、将来どうやって人々を救おうか考えている姿を表したものとされます。56億年以上前から、もう考え始めているのですね。
い)
さて、上で弥勒菩薩の「可能性が高い」と言った理由は、このポーズをとる仏像には、弥勒菩薩以外にも「如意輪観音(にょいりんかんのん)」もあるからです。
如意輪観音の記事は鋭意作成中なので、お待ちください。
肌感では、弥勒:如意輪=6:4くらいでしょうか。
しかもじれったいのは、弥勒菩薩と如意輪観音を見分けることは結構難しいこと。
ですので、最初のうちは、半跏思惟を見たら弥勒菩薩の可能性が高いが、一概にそうとも言えない、どっちなんだろうね、と考えるしかないと思います。なんか締まらずすみません。
4 最後に
ということで、今日は弥勒菩薩について説明しました。
56億70000万年後に降臨する未来の仏、皆さんもぜひ覚えておいてください。
それでは!
大日如来について宇宙一わかりやすく説明した!
今日のテーマは
大日如来(だいにちにょらい)。
「知らん,寝ます」と言わないでください。
この大日如来,なんと
宇宙の最高仏。
しかも,なんと
奈良の大仏がついに覚醒した姿。
とにかくわかりやすさ重視で説明してゆきますから,ぜひご覧ください!
1 大日如来とは?
結論から言うと,大日如来とは「密教における最高位の仏」です。以下,詳しく説明してゆきます。
2 密教について
大日如来の説明のためには,どうしても密教の説明も必要となります。ちょっと長くなりますが,お付き合いください。
2−1 密教とは何か?
密教とは,仏教の一宗派です。①呪文や呪術を重視すること,②教えの真髄が公開されていないこと,そして③大日如来を最高仏とすることが特徴です。以下,具体的に説明してゆきます。
2−2 密教の誕生
釈迦が教えを説いたのは紀元前4〜5世紀の頃です。仏教は,その後,時代を経るに従ってどんどん教えが進化(=後世の人による改変)してゆきます。
例えば,最初の仏教の教えは「出家して修行をすることによって悟りを開くことができる」というものでした。それが,次第に「お経を唱えることによって悟りを開くことができる」とか「南無阿弥陀仏と唱えれば救われる」という教えも登場するようになりました。
そんな仏教の進化の中で最後に登場したのが,密教という教えです。
仏教は,密教登場の後,本場インドで衰退し,もう新しいものは登場しませんでした。そのため密教は「仏教の最終形態」と言って良いです。
2−3 密教誕生の背景
密教が登場したのは,4〜5世紀ごろのインド。その頃インドでは段々とヒンドゥー教が流行してきて,仏教が押され気味でした。
巻き返しを図るために仏教側の人間が生み出したのが,密教という一宗派です。
2−4 密教の特徴
前述の通り,密教の特徴は,①呪文や呪術を重視すること,②教えの真髄が公開されていないこと,そして③大日如来を最高仏とすることにあります。
① 呪文や呪術の重視
仏教の人気を取り戻すためには,仏教をより人々に受け入れられやすい教えにする必要があります。そのため,密教では,呪文とか呪術といったスピリチュアルな要素を多く含むこととなりました。
これは,当時ヒンドゥー教では,呪文や呪術といったものが流行っていたからです。民衆の支持を得るためには,これを取り入れる他なかったのです。
なお,お釈迦様自身はこういったスピリチュアルなものを否定しています。しかし,時代の流れには逆らえず,取り入れることとなります。
※ 呪文・呪術とは具体的に?
「呪文や呪術」と言われてもよくわからないと思いますので,具体例を二つ示します。
・「ノウボウ・アキャシャ・ギャラバヤ・オン・アリキャ・マリボリ・ソワカ」と100万回唱えると,無限の記憶力を獲得することができる。
・大威徳明王(だいいとくみょうおう)という種類の仏像の前に三角形の炉を用意し,そこで火を焚きながら,呪う相手の人形に杭を差し込んでいくと,その相手を呪い殺すことができる。
呪文や呪術の雰囲気は,これでおわかりいただけたと思います。
② 教えの真髄が非公開
何事も,全てが明らかになっているよりも,よくわからない部分がある方が,人を惹きつけやすいでしょう。そうした観点から,密教では,教えの真髄を経典などに書かず,師匠から弟子への口伝でのみ伝えることとしました。
そして,教えを受けた弟子は,決して他の人間にその教わったことを口外してはいけないという制約が課されるようになりました。
これによって,謎めいた雰囲気を出すことに成功したのでした。
何を隠そう「密教」というのは「秘密仏教」の略です。教えが公開されていないから,秘密仏教なのです。
※ちなみにーーその1
教えが公開されていないというのは,あくまで建前の話。実際には,長い歴史の中で,結構の部分が外に漏れてしまっているそうです。
※ちなみにーーその2
密教以外の宗派,例えば念仏重視の浄土宗や浄土真宗,法華経重視の日蓮宗,禅重視の臨済宗や曹洞宗などは,密教に対して「顕教(けんぎょう)」と呼ばれます。教えが経典の形でオープンになっている(=顕(あきら)かになっている教え)からです。
③ 最高仏が大日如来
「隣町の佐藤さんが言ってたんだけど」と言っても,人々は何も興味を示しません。もっとすごい存在が説く教えの方が,人々を惹きつけることができるでしょう。
このような観点から,密教では,大日如来という最強・最高の仏にご登場いただき,彼自身が口を開いて語った教えであるという形式を取りました。この点については後述します。
これまでの仏教が「お釈迦様が言っていた」という形式をとっているのとは対照的です。別にお釈迦様が言っていたと言うのがしょぼいわけではありませんが,もっと崇高なものにしたかったのです。
3 大日如来とは?
密教の説明は以上にして,今日のテーマの大日如来の説明に移ります。
大日如来は,上でちょっと説明した通り,密教における最高位の仏です。
3−1 どう最高なのか?
仏教の世界観に,①この宇宙には無数の世界がある,②それぞれの世界には,最大で一人の仏(=悟りを開いた存在)がいて,その世界を運営する,③それぞれの世界には,仏以外にも,仏の手足となって活動する数多くの菩薩(=修行中の偉い弟子)や,仏を護衛する守護神がいる,というものがあります。
で,大日如来というのは,そんな広い宇宙の中心にいるという存在です。
しかも,なんと宇宙の全ての仏,菩薩,守護神は大日如来の化身といわれます。下の記事で説明した阿弥陀如来,薬師如来なども,全て大日如来の化身とされます。
薬師如来をわかりやすく説明してみた! - 山田大雅の仏像ブログ
それどころか,我々のような全ての生きとし生けるものは,大日如来の生まれ変わりであるとまでされます。
大日如来は,このように,最高位に位置する仏なのです。
3−2 盧舎那仏(るしゃなぶつ)との関係は?
上の説明を聞いて,私が書いた下の記事を読んでくださった方の中に「あれ,大日如来って奈良の大仏(=盧舎那仏)と似ているな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は,大日如来は,名前こそ違いますが,存在自体は盧舎那仏と同じです。
密教を考えたインド人は,密教が登場する300年以上も前に既に別のお経で登場していた盧舎那仏を密教に流用することとしたのです。
全く新しい存在を生み出すよりも,既存の存在に仮託した方が手っ取り早く信頼を得ることができることは目に見えています。
新しくできたコーヒーショップより,スタバの方が安心できるのと同じです。
だから,盧舎那仏を使うこととしたのです。
盧舎那仏については上の記事で説明していますが,要するに,宇宙の中心にいるチート級の仏。この盧舎那仏が自ら教えを説いたという形式を取ることによって,話の説得力を増したのです。
3−3 ではなぜ名前が違うのか?
大日如来=盧舎那仏ならば,端的に「盧舎那仏」という名称で良いのではないかという気もします。なぜ大日如来という名前なのでしょうか。
結論から言うと,存在としては同じでも,働きや見た目が違うから。
盧舎那仏は,元々のお経では,自分自身は宇宙の中心で静かにしていて,自分の化身にあれこれ活動させるものとされていました。
しかし密教では,この盧舎那仏が自ら口を開き,宇宙の真実を語り始める形式をとっています。本来の盧舎那仏とは働きが異なるのです。
また,後述のとおり,大日如来は,体にアクセサリーをつけまくっている点でも,シンプルな布一枚だけをまとう盧舎那仏と異なります。
ですから,新しい名称をつけることとしたのです。
4 大日如来の見分け方
話が長くなりました。最後に,大日如来の見分け方をお話しします。
※ 実は,大日如来には二つのフォルムがあります。「金剛界大日如来」と「胎蔵界大日如来」です。しかし,①胎蔵界は金剛界より仏像として数が少ないこと,②胎蔵界の見分け方はやや複雑であること,の二つの理由から,ここでは,金剛界の大日如来の見分け型に絞って説明します。もちろん,本来は両方説明すべきですが,ブログの方針上,胎蔵界大日如来は省略しました。
4−1 指を忍者のようにしていたら大日如来
大日如来の見分け方は超シンプルです。
指を忍者のようにしていたら大日如来
です。
なお,忍者と大日如来のポーズが似ているのは,偶然ではありません。
忍術は密教の深い影響を受けているそうです。忍者のポーズも,密教由来のものです。ただ,影響を受けているといっても,詳細は不明ですので,忍者のあのポーズが大日如来を表しているとか,そこまで具体的なことは言えません。
4−2 如来なのにアクセサリーをつけている
大日如来の見分け方は以上です。あくまで手が忍者かどうかによって見分けてもらえれば間違えません。
ただ,一点だけどうしても補足する必要があります。
それは,大日如来は「如来」なのにアクセサリーをつけているということ。
大日如来は「如来」です。如来とは,悟りを開いた存在のことです。悟りを開いた存在である如来は,通常,首輪・腕輪・宝冠などのアクセサリーをつけません。
悟りを開くほどのすごい存在となれば,逆にもう何も着飾る必要がないからです。言い換えると,アクセサリーというのは,自分をよく見せようという煩悩の塊であるからです。
しかし!
大日如来だけは,如来なのにこれらのアクセサリーをつけています。
その理由はよくわかっていませんが,とにかくアクセサリーを付けまくる姿で表現されるのが大日如来の特徴なのです(上の大日如来も,きらびやかな宝冠をつけている。)。
大日如来くらい最高の存在となれば,逆の逆にアクセサリーをつけてもOKということなのでしょうか(テキトー)。
さすが最高仏。型破りです。
5 最後に
と言うことで,今日は大日如来について説明しました。長くなりましたが,わかりやすく説明したつもりです。
如来なのにアクセサリーをつける型破りな仏,しかも密教の最高仏。
そんな大日如来,ぜひ覚えておいてください。
それでは!