山田大雅の仏像ブログ

仏像好きがお寺や仏像などについて解説します。

五却院–アフロ頭の仏様

今日は、東大寺のすぐ北にある「五却院」(ごこういん)を紹介します。

 

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(入口)


このお寺は、重源が創建したものです。


重源といえば、平重衡によって焼き討ちにあった東大寺を復興した人物ですね。


このお寺の見所は、なんといっても本尊の五却思惟阿弥陀如来坐像(重文)です。なお,写真撮影は禁止されているので,写真はありません。ググれば画像が出てくると思います。


寺伝によると、宋に渡った重源が日本に戻るときに持ってきたものです。


しかし、お寺の係員によると、近年の調査の結果、材質が中国で使われるものではなく、どうやら日本で作られたものらしいと判明したとのことです。


制作年代については、重源の活躍した鎌倉時代前期と言われています。おそらく創建時からの本尊と思われます。


ただ、見た感じなんとなく院政期の頃を思わせる顔立ちの気もします。


特徴ですが、なんといってもアフロ頭でしょう。


なぜアフロなのかについてです。


この像は、名前にある通り「阿弥陀如来」という尊格です。


如来というのは、修行の末悟りを開いた状態を言います。ですから、かつては修行の身にあった(この身分を菩薩と言います。)ということになります。


そして、この阿弥陀如来は、菩薩のときに人々をどうやって救おうか、ひたすら考えながら(思惟)座禅をしていました。


どれくらい座禅をしていたのか、それを表すのが「五却」という単語です。


一却とは、160キロメートル立方の巨大な岩に、3年に一度天女が舞い降りて、着ている羽衣で岩の上をさっと一撫でしてまた帰るというのを繰り返して、その岩が砂になるまでにかかる時間です。


イメージとしては、ウルルみたいな巨岩の頂上を3年に1度服の袖で撫でるということを繰り返して粉々にしていくようなものです。


で、それの五倍が五却ということになります。


どれだけ考えているんだ、ということですね。


その間髪も切らずにいたことから、このように髪が伸び放題に伸びてしまったのです。


(逆に、それだけ経って髪がこれしか伸びていないことが驚きです。髪の寿命的に、無尽蔵には伸びずに抜けてしまいまた生えるというのが繰り返されていたのでしょうか。(でも、阿弥陀如来の別名は無量寿如来です。無量寿とは無限の寿命という意味です。髪の毛は無量寿ではないということになってしまいます(笑)。))


そして、仏像というのは基本的にお釈迦様の姿が元となっています。お釈迦様は古代インドの人です。インドの人は髪がカールしている人が多く、お釈迦様もその1人でした。


だから、お釈迦様の姿を模した仏像も、髪がカールしているのです。そのため、この仏像もアフロになっているのです。


ちなみに、五却思惟阿弥陀如来は、ここだけではなく他のお寺にも類例があります。ただ、その数は極めて少なく、ほとんど見る機会はないです。


そんな貴重な五却思惟阿弥陀如来坐像、皆さんも拝観してみてはいかが?


場所は東大寺のすぐ北。東大寺観光の後に行くのも良いでしょう。


ただし、この五却院、今回私が行ったときは夏の特別拝観ということで無予約で拝観できましたが、普段は予約をしないと拝観することができません。ご注意を!


それでは。