向源寺-秀麗な十一面観音
概要
・日本でも有数の美しさを持つ十一面観音(国宝)
・顔は法華寺十一面観音、姿は東寺講堂梵天に似ている。不思議な魅力に溢れる。
まずはこのお堂の概要を説明します。
ときは奈良時代。天然痘の流行に心を悩ました聖武天皇が、疫病封じのためここに「光眼寺(こうがんじ)」というお寺を創建させます。
紆余曲折があって、明治時代には近くにある向源寺というお寺がここのお堂を管理することとなりました。そのため、現在ここは向源寺と呼ばれています。
また、このお堂がある場所は、地名を「渡岸寺(どうがんじ)」(この渡岸寺というお寺は現在残っていません。そもそもこういうお寺があったかどうかもわかっていません。)と呼ぶため、「渡岸寺観音堂」とも呼ばれています。
まとめ
・お寺の名称は、かつて光眼寺。今は向源寺。しかし地名から渡岸寺観音堂とも呼ばれる。
さて、次に見どころを紹介します。
見所はなんといっても、ここの本尊十一面観音(国宝)です。
日本に国宝の十一面観音は7体しかありません。その貴重な一体が、なんとここ長浜の地にあるのです!
造像年代にあっては、寺伝では上記聖武天皇による創建の頃と言われていますが、様式などから明らかに平安初期と考えられています。一木造りで、内刳り(像の内部をくり抜いて、また蓋をすること。これにより木の収縮などによる造形の歪みなどを防ぐことができます)が施されています。
この像の特徴は、以下の三つです。
まずは長い右腕です。膝に簡単に手が届くくらい長いです。
長い腕は、平安初期の仏像にはしばしばみられるところです(例えば、法華寺十一面観音も長い右腕を持ちます)。
なぜ腕が長いのか。理由はよくわかりませんが、①人々を救うために腕が長くなった、②仏像を下から見上げるとちょうどバランスが取れる、など色々な考えがあります。
いずれにせよ、人間離れした不思議な魅力を醸し出しています。
二つ目は、正面の顔(以下「本面」といいます。)の左右に、あまり大きさの変わらない顔があることです。
十一面観音は、通例本面の上に多くの顔を表します。本面の横に顔をもうけるのは珍しいです。
三つ目は、本面の後ろに大笑いしている小さな顔を持っていることです。
この顔のことを「暴悪大笑面」といい、笑いの力で悪を退ける作用があると言われています。
十一面観音の後ろについた顔は、基本的にこの暴悪大笑面なのですが、普通は見ることができません。しかしここの像は、後ろに回って見ることができます。
以上の3点によく着目して見てみてください。
さて、最後に私的この仏像の見方を紹介します。
この像は、一見人智を超越した顔をしているようにみえますが、目を合わせてよくみてみると、以外とはっきりと目が示され、何か人間っぽさを感じるのです。その雰囲気は、法華寺の十一面観音に似ていると思いました。
一方、全体的な雰囲気は、少し黒ずみ、エキゾチックさを漂わせて、まるで東寺講堂梵天のようです。
このように、この像は見れば見るほど色々な見え方がしてきます。とても魅力のある仏像です。
ということで、今日は向源寺について説明しました。
ここの仏像の見所は語り尽くせません。ぜひ一回訪れてみてください。
それでは!