山田大雅の仏像ブログ

仏像好きがお寺や仏像などについて解説します。

現光寺-寂れた寺にある美麗な十一面観音

今日は、京都府木津川市にある現光寺について説明します。

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概要

・近くの海住山寺が管理するお寺

・座っている十一面観音が優美


まずは現光寺の概要ですが,これはサラッと行きます。

創建はよくわかっていませんが,鎌倉時代にはできていた寺院です。

その後は荒廃の一途をたどりましたが,近所の農民などの支えによってなんとか廃絶するこは避けられました。明治時代になると,近くにある海住山寺が管理をすることとなりました。現在も,このお寺は無住寺(住職がいない寺)であり,海住山寺が管理しています。今残っているのは一つの小さな御堂と,その近くにある宝蔵庫だけであり,正直とても寂れています。


次に見所について説明します。見所はなんといっても,本尊の十一面観音菩薩坐像(重要文化財)です。

作者は明らかではありませんが,作風から鎌倉時代に慶派の仏師が関与していることが予想されています。

ヒノキの寄木作りで,大きさは目測100センチくらいと比較的小柄です。目には玉眼(水晶などを目の部分にはめ込む技法。平安時代末期に慶派によって考案された。)をはめており,特に下から見ると綺麗に光る目がこちらを見つめていることがわかります。

体には金箔が所々に残っていますが,これは当時のもの。金箔が剥がれている部分からは漆が黒光していて,風情があります。

凛々しい顔立ち,綺麗な衣紋の表現,繊細な冠などの装飾など,どこをとっても非常に美しいです。こんなさびれたお寺によく残っていたなあと感動するばかりです。


さて,十一面観音像の特徴として,坐像であることに触れなければなりません。十一面観音菩薩は通常立像として作られ,坐像は非常に珍しいからです(同様の例として,甲賀市の櫟野寺本尊などもありますが)。

どうしてここの十一面観音は坐像などでしょうか。詳しいことはわかっていませんが,どうやら,現光寺の近くにある海住山寺に滞在していた解脱上人(貞慶とも。)という偉い僧侶の補陀落信仰の影響を受けたものと推定されています。

補陀落信仰とは,この世界の遥南には観音菩薩が納める補陀落山という世界があり,その世界には観音菩薩がじっと座禅を組んで修行をしているという考えのことです。

解脱上人は補陀落信仰があり,その影響で,現光寺の十一面観音菩薩も座禅を組んだ姿に掘られたということです。


今日は現光寺について説明しました。最後に拝観方法ですが,現光寺の十一面観音は毎年5月と11月の2〜3日しか開帳しておりません。普段はお寺に行っても誰もいないので,注意してください。なお,公開時期については,「祈りの回廊」というサイトに乗っていますので,そこを参照してみてください。


ということで,皆さんも,優美な十一面観音をぜひみてみてください。

それでは。