うつむく仏様(秋篠寺技芸天像)
仏像といえば,普通は真っ直ぐ前を向いてこちらを見守ってくれるもの。
しかし,奈良市の秋篠寺(あきしのでら)というお寺には,なんと
斜め下にうつむく仏様
がいるのです・・・。
時を超えた共同製作
によって作られたものだった・・・。
ということで今日は,
秋篠寺の技芸天(ぎげいてん)像
について説明します!
「秋篠寺?技芸天?知らんがな」というそこのあなた。絶対に楽しいので,ぜひ最後まで読んでください。
1 秋篠寺とは?
1−1 秋篠寺について
まずは,超簡単に秋篠寺について説明します。
奈良時代には創建されていたと言われる古いお寺です。
これから説明する「技芸天」が一番の見どころですが,それ以外にも,お堂に向かう道も見所です。一面に苔が生えていて,まるで緑色の絨毯の上を歩いているようです。
1−2 ちなみに・・・
ちなみに,今の皇室に秋篠宮家ってありますよね。それはこのあたりの地名「秋篠」が由来です。
2 技芸天
では,本論の秋篠寺の技芸天像について語ります。
2−1 技芸天とは?
そもそも技芸天は,インドの神様が仏教に取り入れられたもの。
技芸天は,ヒンドゥー教の神であるシヴァ神が音楽を奏でて楽しんでいるときに,シヴァの髪の生え際から生まれたという謎の出自を持ちます。そして絶世の美女。
「君どこ出身?」「私?生え際」ということですね。
技芸天という名称が示すように,技芸(ダンスとか楽器とか)上達のご利益があるとされます。
2−2 うつむく仏様
以上が技芸天の説明。次に本題の,秋篠寺の技芸天像がうつむいていることについて説明します。
普通仏像というと,真っ直ぐ前を向いている姿で作られるものです。しかし,なんと,秋篠寺の技芸天は,普通の仏像とは異なり,斜め下にうつむいています。
見てください。この絶妙な顔の傾き。品の良さを感じます。
何か浮世絵の美人図のような雰囲気を感じるのは私だけでしょうか。
さて,秋篠寺の技芸天がどうしてこのような角度なのか。これはよくわかっていません。技芸天が絶世の美女であると言われたために,あえてこのように首を傾けて美女感を出したのかもしれません。
2−3 時を超えた共同製作
最後に,この仏像が奈良時代と鎌倉時代の仏師の共同製作であることについて説明します。
この仏像が最初に作られたのは奈良時代。その後,この仏像は,頭部のみが残って,首から下は壊れたか何かの理由でなくなってしまいました。そのため,首から下を鎌倉時代に復元し,残っていた頭部と接合させました。
このとき鎌倉時代の仏師は,とある仕掛けを施したのです。
それがまさに,首を下に向けてくっつけるということでした。
そう。実は最初に作られた奈良時代の頃,首は下を向いていなかったのです。このことは,首の接合部の線の傾きなどを調査することによって判明しています。
つまり今首を傾けているのは,鎌倉時代の仏師が見せた独自の表現なのです。
技芸天の美しさを追求して,あのうつむきを作ったのかもしれません。
つまりこの仏像は「美しい顔を奈良時代の仏師が作り,美しい姿勢を鎌倉時代の仏師が作る」という時を超えた共同製作により完成したものなのです。
2−3 よくよく考えると・・・
まあ,よくよく考えてみると,昔の人が作った作品を,後の人の思いで改変してしまったのですから,ダメと言えばダメかもしれませんが。古くなったレオナルドダヴィンチの絵を現代芸術家が独自に描き足すようなものですからね・・・。
4 最後に
ということで,今日は秋篠寺の技芸天について説明しました。
皆さんも秋篠寺に行って,絶妙にうつむく技芸天をぜひ見てみてください。
それでは!